「さっきまで穏やかに過ごしていたのに、些細なことでカッとなって家族にきつく当たってしまった」「理由もないのに涙がこぼれて、急に胸が締め付けられるように不安になる」──。
40代を過ぎた頃から、まるで自分の中に別の誰かがいるかのように、感情のコントロールがうまくいかなくなった。そんな経験はありませんか?
これまで乗り越えられてきたはずの仕事のプレッシャーや家庭の出来事が、ひどく重荷に感じられる。夜、ベッドに入っても漠然とした不安で眠れない。そんな自分が嫌になり、「私の性格が悪くなったのかもしれない」「もう元の自分には戻れないんじゃないか」と、一人で自分を責めてしまっている人も少なくないのではないでしょうか。
もしあなたが今、そんな出口の見えないトンネルの中にいるように感じているなら、まず知ってほしいことがあります。そのつらい感情の波は、決してあなたのせいではありません。それは、多くの女性が経験する「更年期」という、身体の大きな変化がもたらす自然なサインなのです。
この記事では、なぜ更年期に心が揺れやすくなるのか、そのメカニズムを紐解きながら、今日からすぐに実践できる具体的なセルフケアまで、あなたの不安に優しく寄り添いながら解説していきます。大丈夫。あなた一人ではありません。正しい知識と対処法を知れば、この変化の波を上手に乗りこなしていくことができるはずです。
「感情のジェットコースター」の正体は?ホルモンと自律神経の乱れ
なぜ、これまでと同じ自分のはずなのに、こんなにも感情が揺さぶられてしまうのでしょうか。その大きな原因は、女性の体を長年守ってきた「女性ホルモン(エストロゲン)」の急激な減少にあります。
「またホルモンの話か」と思うかもしれませんが、このエストロゲンが私たちの心身にどれほど大きな影響を与えているかを知ることは、自分を理解し、不安を和らげるための第一歩。驚くほど効果的なんです。
エストロゲンの減少が「幸せホルモン」を揺さぶる
エストロゲンは、妊娠や出産に関わるだけでなく、私たちの感情を安定させる重要な役割も担っています。特に、精神の安定に不可欠な脳内の神経伝達物質「セロトニン」の働きを助ける作用があるのです。セロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、これが不足すると不安や落ち込み、イライラを感じやすくなります。
更年期に入り、卵巣の機能が低下すると、エストロゲンの分泌量はジェットコースターのように急降下します。すると、これまでエストロゲンに支えられていたセロトニンの働きも不安定になり、心のバランスが崩れやすくなるのです。これが、理由のない不安感や気分の落ち込み、突然のイライラの直接的な引き金になっている、というわけです。
自律神経の司令塔がパニック状態に
さらに、エストロゲンの減少は「自律神経」のバランスも乱します。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、心臓の鼓動や呼吸、体温、発汗などをコントロールしている生命維持の根幹システム。活動モードの「交感神経」と、リラックスモードの「副交感神経」がシーソーのようにバランスを取り合っています。
この自律神経をコントロールしているのが、脳の視床下部という部分。そして、実はこの視床下部は、女性ホルモンの分泌を指令する司令塔でもあります。
更年期になりエストロゲンが減ると、視床下部は「もっとホルモンを出しなさい!」とパニックを起こして指令を出し続けます。しかし卵巣はそれに応えられないため、司令塔である視床下部が混乱してしまうのです。その混乱が、すぐ隣にある自律神経のコントロールセンターにも伝わり、自律神経全体のバランスが崩れてしまいます。
その結果、突然体がカーッと熱くなる「ホットフラッシュ」や、急な動悸、めまい、異常な発汗といった身体症状が現れます。そして、こうした身体の不調が、さらなる精神的な不安を呼び起こす…という悪循環に陥ってしまうのです。
更年期に現れる症状は、こうした精神的なものと身体的なものを合わせて約200種類もあると言われています。人によって症状の出方は千差万別。著名な産婦人科医である高尾美穂先生も、その個人差について次のように言及しています。
高尾 美穂(産婦人科専門医・医学博士)
「更年期症状の現れ方は、その人の性格や、仕事や家庭といった生活環境にも影響されます。だから、症状の現れ方は人それぞれ。症状がない人もいれば、日常生活に支障が出るほどつらい症状に悩まされる人もいます。また、複数の症状が重なって現れることも少なくありません。」
(出典:高尾美穂『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』世界文化社)
つまり、あなたが感じている不調は、ホルモンの変化という土台の上に、日々のストレスや元々の気質などが複雑に絡み合って現れているのです。「みんなは平気そうなのに、なぜ私だけ…」と感じる必要は全くありません。
イライラを笑顔に変える「幸せホルモン」の育て方
感情の波がホルモンバランスの乱れによるものだと分かっても、目の前のつらい症状が消えるわけではありません。でも、ご安心ください。私たちは、日々の食事を少し工夫することで、心の安定に欠かせない「セロトニン」を育むことができます。
「食事で気分が変わるの?」──。半信半疑に思うかもしれませんが、私たちの心と体は、食べたもので作られています。特に、セロトニンの材料となる栄養素を意識的に摂ることは、とても効果的なアプローチなのです。
キーワードは「トリプトファン」
幸せホルモン・セロトニンの主な材料となるのは、「トリプトファン」という必須アミノ酸です。必須アミノ酸は体内で作り出すことができないため、食事から摂取する必要があります。
では、どんな食材にトリプトファンは多く含まれているのでしょうか?
大豆製品: 豆腐、納豆、味噌、豆乳など 乳製品: 牛乳、チーズ、ヨーグルト その他: バナナ、ナッツ類(アーモンドなど)、卵、赤身魚(マグロ、カツオなど)
ホラ、この通り!どれも普段の食事に取り入れやすいものばかりだと思いませんか?
例えば、朝食に納豆ごはんやバナナヨーグルトをプラスする。ランチに豆腐の味噌汁を追加する。そんな小さな工夫からで大丈夫です。
セロトニン生成を助ける名脇役たち
トリプトファンを効率よくセロトニンに変えるためには、一緒に摂りたい栄養素があります。それが「ビタミンB6」と「炭水化物」です。
ビタミンB6: 赤身魚、鶏肉、バナナ、さつまいも、玄米などに多く含まれます。
- 炭水化物: ごはんやパン、麺類など。トリプトファンを脳に運び込むのを助けてくれます。
つまり、「納豆ごはん」や「バナナと牛乳のスムージー」などは、セロトニンを作る上で非常に理にかなった組み合わせなのです。バランスの良い食事を心がけることが、結果的に心の安定につながる。うれしいですね。
一方で、感情の波を大きくしてしまう可能性のある食べ物にも少し注意が必要です。血糖値を急激に上げ下げする甘いお菓子やジュース、カフェインやアルコールの摂りすぎは、自律神経を刺激し、イライラや不安を増幅させることがあります。完全に断つ必要はありませんが、「なんだか今日、気分が不安定だな」と感じる日は、少し控えてみると良いかもしれません。
嵐が来ても大丈夫。自分でできる「心の避難訓練」
食事の改善と合わせて行いたいのが、感情の波が襲ってきたときに、それを上手にやり過ごすためのセルフケアです。これからご紹介するのは、いつでもどこでも、自分一人でできる「心の避難訓練」。自分に合ったものを見つけて、お守りのように持っておくと、心がずっと楽になりますよ。
1. 「3秒吸って、6秒吐く」魔法の深呼吸
イライラや不安で胸がザワザワしてきたら、まず試してほしいのが深呼吸です。特に、息を吐くことを意識した「腹式呼吸」は、高ぶった交感神経を鎮め、リラックスモードの副交感神経を優位にしてくれます。
やり方は簡単。静かな場所で椅子に座るか、楽な姿勢で立ちます。鼻から3秒かけてゆっくり息を吸い込み、お腹を膨らませます。そして、口から6秒かけて、吸ったときの倍の時間をかけてゆっくり息を吐き切ります。これを3〜5回繰り返すだけで、驚くほど心が落ち着いてくるはずです。
2. 「15分だけ」のリズミカルな運動
ウォーキングや軽いジョギング、踏み台昇降など、一定のリズムを繰り返す運動は、セロトニンの分泌を促すのに非常に効果的です。大切なのは「頑張りすぎないこと」。「1日15分の散歩から」で十分です。音楽を聴きながら、あるいは景色を楽しみながら、心地よいと感じるペースで体を動かしてみましょう。運動後に得られる爽快感は、気分の落ち込みを吹き飛ばしてくれます。
3. 「朝の5分」の太陽の光
セロトニンは、太陽の光を浴びることで活性化します。朝起きたら、まずカーテンを開けて、ベランダや窓際で5分間、朝日を浴びる習慣をつけてみませんか?体内時計がリセットされ、夜の寝つきも良くなるという嬉しい効果も。曇りの日でも屋外の光は室内の照明よりずっと強いので、諦めずに外の空気に触れてみましょう。
4. モヤモヤを書き出す「感情ジャーナル」
頭の中でぐるぐると渦巻いている不安や怒りを、そのままノートに書き出してみましょう。「〇〇にイライラした」「将来が不安でたまらない」など、誰に見せるわけでもないので、正直な気持ちを吐き出すだけでOK。文字にして客観的に眺めることで、自分の感情と少し距離を置くことができ、「なんだ、私はこんなことで悩んでいたのか」と冷静になれることがあります。
5. 五感を満たす「自分を甘やかす」時間
忙しい毎日の中で、意識的に自分をいたわる時間を作りましょう。好きな香りのアロマを焚く、心安らぐ音楽を聴く、肌触りの良いブランケットにくるまる、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる…。視覚、聴覚、嗅覚、触覚といった五感を満たしてあげることは、ダイレクトに心をリラックスさせてくれます。「今日は頑張ったから」と、自分へのご褒美タイムをぜひ設けてあげてください。
「更年期だから仕方ない」と諦める前に知ってほしいこと
セルフケアを試しても、どうしてもつらい症状が改善しない。日常生活に支障が出てしまっている。そんなときは、どうか一人で抱え込まないでください。「更年期だから仕方ない」「みんな我慢しているんだから」と諦めてしまうのは、とてももったいないことです。
今は、婦人科で受けられる有効な治療法がたくさんあります。専門家を頼ることは、決して大げさなことでも、恥ずかしいことでもありません。
婦人科では、血液検査でホルモンの状態を調べ、あなたに合った治療法を提案してくれます。代表的なものには、減少したエストロゲンを少量補う「ホルモン補充療法(HRT)」や、個々の体質や症状に合わせて処方される「漢方薬」などがあります。また、カウンセリングを通じて、心の負担を軽くすることもできます。
特に、気分の落ち込みが激しく、何にも興味が持てない状態が続く場合は、更年期症状だけでなく「うつ病」が隠れている可能性も。自己判断はせず、専門医に相談することが何よりも大切です。「ちょっと相談してみようかな」という軽い気持ちで、婦人科のドアをノックしてみてください。きっと、あなたの心強い味方になってくれるはずです。
新しい自分と出会う、変化の季節へ
更年期は、決して「女性としての終わりの始まり」ではありません。むしろ、これまでの役割から少し解放され、自分自身の心と体にじっくりと向き合うための、大切な「移行期間」です。
コントロールできない感情の波は、あなたを苦しめる敵ではなく、「少しペースを落として、自分を大切にしてね」という体からのメッセージなのかもしれません。
今日ご紹介したセルフケアの中から、まずは一つでも、あなたが「これならできそう」と思えるものから試してみてください。その小さな一歩が、必ずあなたの心を軽くし、穏やかな日常を取り戻すための大きな力になります。
変化の波を乗りこなし、その先にある新しい自分と出会うために。この大切な季節を、自分らしく、健やかに過ごしていきましょう。
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